榎本海月「余白の再認識 -日本建築を余白空間の集合体と捉える-」
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日本の民家は余地空間の原点であり、「余白の集合体」であると言えるのではないだろうか。これまで川崎市立日本民家園をはじめ多くの日本建築についての空間的調査を行ってきた。私は日本民家が空間として持つ「余白」の魅力に圧倒された。現代核家族化、少子高齢化などを背景に一人一人のコミュニティ形態は縮小され続けている。街中の至る所に1 人空間が確保され、人と関わること自体が減りつつある。そこで日本民家の余白を再認識し、設計手法として応用・転換させることで身近なコミュニティの「きっかけ」の集合体のような建築を提案することができるのではないかと考えた。
Research:日本民家から導き出した設計手法
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私たちの班では日本民家の設計手法を18の要素として抽出した。私はそれら18の要素に更に分析を加え、カテゴライズしていくことで、日本民家の設計にはある共通点があることにたどり着いた。それが日本民家における余白の構成である。実は日本民家を解体していくと、複数の余白空間の混合によって作られていると言える。そして、これらの余白空間の構成は、今日様々なシーンで用いられている余白空間の原点であるとも言える。
ここからより具体的な内容に入っていく。前述したように、日本民家は方向性を持った余白空間が意図的に設計されていると読みとける。例えば、縁側を作るオフセットの手法では、全方向に対して広がるベクトル、大屋根の手法では屋根の上部に余白ができ、斜め上方向のベクトルが存在する。この他にも日本民家には方向性を持った余白のベクトルが存在し、これらを用いることで様々なアクティビティが交差するような地域センターを提案する。
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平面の計画。ここでは「空間のヒエラルキー」、「小さな部屋の集合」「オフセット」の3つの手法を用いて設計を行う。まず、前提条件として2面道路に面している南西側の空間を「ハレ」、北東側の空間を「ケ」の空間と定義し、計画敷地に一本の軸を通す。それに伴い諸室をハレ、ケ、そのどちらでもないの3つにエリアにゾーニングする。ゾーニングしたそれぞれの諸室は「小さな部屋の集合」の手法により1つに一箇所に集められ、縁側をつくるオフセットの手法によって拡張される。
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立面の計画。立面は余白空間の手法に町屋の設計手法を組み込むことで構成する。町屋では共通点と相違点の両者がイーブンのバランスをとることで全体としての一体感を持ちながらも多様な空間を作っている。今回の計画では大屋根を用いること、高さ4mのラインでファサードに変化を与えることを共通とし、それ以外の建物の向きや屋根の角度を変えることによって、全体としての一体感を持たせながらも、多様なファサードを構成する。
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断面計画。平面の構成が断面にも直接現れ、余白空間に光を取り入れます。日本民家はいわば機能主義の究極である。ここでは日本民家で光を取り入れるために用いられていた屋根の設計手法を応用して用いている。
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